透析アミロイドーシスのすべて

07手背のアミロイド症

手背のアミロイド沈着

透析アミロイドーシスでよく知られているのは手根管症候群ですが、これは手掌側の横手根靭帯(屈筋支帯)にアミロイドが沈着して発症することは以前解説しました。今回は手の背側の靭帯にアミロイドが蓄積して障害を起こすアミロイド関節症を解説いたします。

症状

に示すように、手の甲には背側手根靭帯という靭帯があります。この靭帯は伸筋腱を束ねているので別名伸筋支帯と呼ばれています。ここにアミロイドが沈着すると、写真1のような手背の腫瘤が出現したり、手指が完全に伸展できなくなります。

また手首や第1指を背屈させた時に手背の疼痛が出現します。背側手根靭帯は図のように6区画に分かれています。第4区画の障害では手首をそらすと疼痛が出現し、手首の背屈が困難となるため、立ち上がる時に手のひらをつくことができません。そのため患者さんは立ち上がる時にこぶしを作ることが多いようです。

親指の伸筋腱は2本あり、第1区画と第3区画を通っています。この部分で伸筋腱の動きが障害されると、親指を反らせなくなったり、親指の背側の付け根が痛いという症状が出現します。

背側手根靭帯
図 背側手根靭帯
手背の腫瘤形成と手指の伸展障害
写真1 手背の腫瘤形成と手指の伸展障害

手術適応

手根管症候群、肘部管症候群や肩関節症は手が痛くなったり、しびれたり、肩が痛いという症状がありますが、手の裏のアミロイド症は神経が圧迫されませんので、痛みというより手や指が反らないことにより、日常生活にどの位不自由があるかで手術をするかどうか決定します。

手術

手術は手首の背屈障害が主症状であれば、第4区画の靭帯の切開をし、親指の障害であれば、第1、3区画の靭帯の切開をします。

写真2は手首がそらない人の手術時の写真です。手の甲の皮膚を3〜4cm切開し伸筋支帯を確認します。そして伸筋支帯をハサミで切開します。写真3は伸筋支帯切開後のものですが、伸筋腱が観察できます。術後は手首の背屈が楽にできるようになり、手背の疼痛も軽快します。

写真4・写真5は親指の手術時の第1区画切開後、第3区画で締め付けがあることが確認された症例です。このような時は第3区画も切開し、親指が楽に反らせることを確認します。

半分以上の症例では第1区画の切開のみで親指の動きは楽になるようです。

肥厚した背側手根靭帯
写真2 肥厚した背側手根靭帯
背側手根靭帯切開後
写真3 背側手根靭帯切開後
背側手根靭帯第3区画の切開前
写真4 背側手根靭帯第3区画の切開前
背側手根靭帯第3区画の切開後
写真5 背側手根靭帯第3区画の切開後

一口メモ

親指の伸筋腱の腱鞘炎はデュケルバン(duQuervain)腱鞘炎が知られています。これは手をよく使う人が罹患する腱鞘炎です。親指の伸筋腱は第1、第3区画を通過していますが、デュケルバン腱鞘炎の場合1区画のみの切開で症状は改善します。透析患者さんの場合、3区画の切開を必要とする場合があります。

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